日本昆虫学会第57回大会

1997年度福岡大会は10月3日(金)~5日(日)の3日間,福岡市中央区九州大学六本松キャンパスにおいて開催された. 大会参加者の総数は316名で,そのうち一般243名(含非会員59名),学生73名(含非会員18名)であった. 当日参加者は120名(一般97,学生23)を数え,そのうち,会員は69名,非会員は51名であった. 大会発表は一般講演が127題(うち講演取消し3件:A317, A319, B107,),シンポジウムが3テーマで11題(うち講演差し替え:E207→熱帯雨林の一斉開花への送粉者群集の応答:永光輝義(森林総研)), ポスター発表が11題,小集会が8テーマで開催された.非会員によるシンポジウム講演のご協力や多数の聴講参加もあった. 大会2日目のシンポジウムは,「昆虫の分子進化のインパクト」,「おもしろ化学生態学」,「植物をめぐる昆虫群集の構造と相互作用」のテーマで, いずれの会場も満員の盛況で活発な討論があった.懇親会は10月3日午後6時から福岡ガーデンパレスで会催され,参加者は224名に及ぶ盛会であった. また,名誉会員宮本正一氏のご挨拶を頂いた.

今度の大会は九州支部の福岡県,佐賀県の会員を中心に,学生・院生の多大なご協力も得て,久ぶりの単独開催としては成功裏に終わり,九州支部長 森本 桂氏,大会副会長 湯川淳一氏,事務局長 嶌 洪氏をはじめ,大会関係者のご苦労に対して学会側として厚く感謝申し上げたい.

(大会会長,三枝豊平)

1997年度総会における会長挨拶

本年及び来年度の会長に選出されました三枝豊平です.一つの大きな転機を迎えつつあります日本昆虫学会の,学会長としての重責に耐えうるか,いささか心許ないところでありますが,学会の今後の発展のために最大限の努力を尽くす所存ですので,会員のみなさまの積極的なご協力をお願いいたします. 今回は日本昆虫学会第57回大会に全国各地から多数の会員のみなさまが参加下さいまして,誠に有り難うございます.会員外の方々も含めて参加者は300人を越えました.この参加者数は,本学会の単独開催の大会としましては,おそらく最大の数であると思います.会員の研究の最新の成果を発表し,討論しあう場としての大会は学会の最も重要な活動の一つでありまして,今回の大会の盛況は,学会の今後の発展を占う意味でも,大変明るいニュースであると受け止めています.

このように申しましても,冒頭で述べましたように,本学会は今一つの大きな転機と申しましょうか節目を迎えています.長年に亘る日本応用動物昆虫学会との合併の計画が,最終段階で挫折してしまいました.この合併の提案は,日本応用動物昆虫学会側から出されたものでありまして,必ずしもこれに積極的ではなかった多くの本学会員が,意識を変革して合併の意義を認め,2/3 を越える賛成のもとに,合併を承認したにも拘わらず,合併を提案した側である日本応用動物昆虫学会の会員投票で否決され,実現しませんでした.合併に向けて,本学会が払った労力,財政支出だけでも多大なものでありました.

生物学,昆虫学の研究が様々な分野で急速に変化・発展しているこの時代に,10年近くに亘る長い歳月の間,本学会は学会としての変革を,応動昆との合併と新学会における刷新にかけてきたと言っても過言ではないと思います. そして,合併が不調の終わってみれば,本学会は,独自の改革をほとんど何一つなすことができずに,10年の歳月を過ごしてしまったという厳しい現実が残されてしまいました.合併の不成立について,挫折感をもった者,応動昆側を不条理と批判した者,むしろその結果を喜んだ者,など本会員の感想は様々でありました. しかし,不調に終わった今,本学会に残された積極的な面は,大多数の会員が合併を認めたこと,すなわち,合併の精神である昆虫学の総合的な発展が期待できる学会の必要性を認識されたこと,であると思います.この点は,まさに本学会は,応動昆に比較して,学問に対する遥かに高い見識と展望を有すると共に,他に対して寛容さと協調性をもって,柔軟に対応できる会であることを,客観的に示したと思います.そして,学会の変革・改革は充分に行えませんでしたが,改革に向けての会員の意識は,確実に高まってきたと言うのが,現実であると認識しています.また,本学会は,かつて20数年前に,若い世代の会員の強烈なエネルギーを中心にして,内部から学会を大きく変革し,現在の民主的な会の発展の基礎を作り出した,輝かしい歴史を持っております.

合併が不調に終わった段階で設立された将来問題検討委員会で,学会の改革を含む将来的な問題を,様々な角度から検討しております.長期的な展望のなかで実現すべき問題とともに,合併問題のために先送りされて,いま早急に改革すべ緊急課題も検討されて,これらは今回の評議員会で討議され,この総会に付されることになりました.本学会の発展のために基本的に重要な事柄は,第1に,学会の現在と将来を担う,若い世代の会員を学会に迎え入れること,第2に,年齢を問わず,優れた研究者を学会に迎え入れることです.このことは,学会を高度な専門家集団にして,いわゆるアマチュア研究者を排除する事では決してありません.第3に,本学会のように,特定生物群を研究対象にする学会は,生理学,発生生物学,行動学,生態学,分類学など,それぞれ生物の特定の側面をもっぱら研究することを目的とする学会とは本質的に異なる面を持っています.それは,主に昆虫という生物群を対象として,基礎生物学の諸分野はもとより,応用生物学や環境科学などの研究者が,それぞれの専門分野の研究活動を行いながらも,他分野の研究に積極的な関心を示して,それらと連携する事によって,昆虫という生物を総合的にと言いましょうか,ありのままの姿でトータルに,より客観的に理解できる,そのような研究活動の場としての存在価値が,本学会の大きな特色であると思います.その為には,特定の分野の研究者に偏らずに,しかも他分野に理解を示す様々な分野の研究者で会を構成する事が必須であると思います.

今,会の構成員のことを中心に申し上げましたが,このような会員構成を実現するためには,現在の私たち会員の努力で,この会を魅力的な会,入会したくなるような会に変革していくことが必須であります.若い研究者,優れた研究者,昆虫に関わる多様な分野の研究者,このような方々を本学会に迎え入れるために,早急になすべき可能な努力としては,大会の企画と学会誌の改革の2点があります.参加して意義のある大会にすること,参加してよかったという満足感のある大会にすること.それと,会員各自の成し遂げた優れた研究成果である論文を,広く世界の研究者に早く知ってもらえるような学会誌にすること,いわば投稿意欲のわく学会誌にしていくことであります.その点,特に年来の課題として著しく取り組みが遅れている会誌の改革を,早急に実行する必要があると痛感しております.これにつきましては,本総会の協議事項の中で提案させていただきます.

学会の改革の中で重要なことの一つは,学会と学会員の関係であります.現在の学会の状況ですと,会員と学会との関係は,会費を納入する事,年4回の会誌の配布を受けること,一部の会員は大会に参加する事,2年に一度の役員選挙に投票すること,そして支部活動に限られています.申し上げたいことは,学会と会員のコミュニケーションの場がほとんど欠けており,会員が学会から情報を得られる場,学会に会員が情報を提供できる場が,極めて制限されていることです.この面を改善する方策も直ちに実行されなければならないと考えています.その一部として,会誌の改革とも関連したニュースレター的性格を持つ出版物を発行すること,及びインターネット上に会のホームページを作成して,会員との交流の場にすることを実施したいと思います.これら二つは,すでに多くの学会が実行していることでありまして,例えばアメリカ昆虫学会は,数百ページにも及ぶホームページを開いて,様々な情報を会員に提供しています.

さて,本学会は会員だけの閉ざされた集団ではありません.会則に,会の目的としてうたわれている昆虫学の普及を通じて,他の学会や社会との関わり深めて行くことも重要です.ホームページはその点会員外もアクセスできるものであり,会員外の方々が本会に関心をよせ,ひいては入会者として迎え入れるための情報も提供できます.一方,本会だからこそできる学会の対外的活動もあります.自然保護委員会が企画している「昆虫類の多様性保護のための重要地域第1集」や,「日本の昆虫」編集委員会が編集作業を進めている「日本の昆虫」のシリーズの出版などは,このような対外的な活動でありまして,これらも評議員会の報告の中で述べさせていただきます.

以上縷々述べました事柄は,本学会の改革のなかの極く一部,第一歩でありまして,これからも長期的展望を持って,不断の努力を続けていくことが肝要です.このように本会を改革していくためには,会員の御協力とともに,会員からのいろいろな提案も是非期待したいところです.また,今回は会の財政問題については具体的な提案を行いませんが,会誌の英文・和文誌の分割など,学会の重要な事業に対する財政的な補助を必要とする状況に対処するために,学会基金への積極的なご寄付を会員各位にお願いする次第であります.さらに,大学の昆虫学,応用昆虫学,生物学関係の研究室の教員の方々には,皆さんの指導の下にある学生,院生に対して,彼らが本学会に入会していただけるように,積極的に勧誘して下さいますようお願い申しあげます.また,会誌の質を高めるために,本学会誌にみなさまの最も優れた論文を投稿して下さいますよう強くお願いいたします.従来,日本昆虫学会の大会で講演された内容を,他の学会誌に投稿することがしばしば見られる,とも言われています.今回の大会で御講演された方々は,論文を完成されましたら,是非本会の会誌に御投稿下さいますようお願い申しあげます.

以上,会員のみなさまには今後とも会の発展のために,積極的な御努力をお願いして,異例に長くなりましたが,会長の挨拶とさせていただきます.

(学会会長,三枝豊平)

1997年度総会報告

1997年10月4日 13:00-14:30
九州大学六本松地区新1号館110番講義室.

議長:上田恭一郎九州支部評議員.
冒頭に三枝豊平会長から挨拶があった.

(庶務幹事,上宮健吉)

1997年度評議員会報告

1997年10月2日17:00~19:55 九州大学六本松地区本館第1会議室(福岡市)

出席者:
〈北海道〉諏訪正明,堀 浩二,〈東北〉正木進三,〈関東〉立川周二,友国雅章,山崎柄根,林 正美,大場信義,岡島秀治,渡辺泰明,巣瀬 司(自然保護委員長),田中誠二,山根爽一(副会長),〈東海〉阿江 茂,〈信越〉藤山静雄,〈近畿〉中西明徳(編集委員長),内藤親彦,吉安 裕,日高敏隆,〈中国〉前田泰生,積木久明,〈四国〉野里和雄,〈九州〉嶌 洪,(前会計監査),山根正気(将来問題検討委員長),上田恭一郎,〈委員会〉森本 桂(日本の昆虫編集委員長),〈本部〉三枝豊平(会長),上宮健吉(庶務),緒方一夫(会計),林利彦(渉外),友国雅章(図書),橋本佳明(編集)

I. 会務報告

  1. 庶務:
    1. 1997-98年度の学会幹事(別頁に掲載済み),自然保護委員会(委員長:巣瀬 司),会計監査(多田内 修,高木正見)が通信評議員会で承認された.各支部幹事から自然保護委員の通知があった.
    2. 8月31日現在,会員数1,335名(名誉会員 7名,正会員 1,214名,海外会員 38名,賛助会員 15名,団体会員 61名).会費2年分滞納者 32名,3年分滞納者 18名.なお,4年分滞納者7名は12月末日にて退会処分とする.会費納入率は95.7%.
    3. 2月15日付けで第17期日本学術会議の会員候補者として第4部に上野俊一氏(推薦人:倉橋弘氏,推薦人予備者:友国雅章氏),第6部に三橋 淳氏(推薦人:佐々木正己氏,推薦人予備者:北野日出男氏)を日本昆虫学会から推薦した.7月17日付けで日本学術会議の会員に推薦すべき者として三橋淳氏が学術会議から通知された.7月30日付けで学術会議第4部会員の星 元紀氏から「動物科学研究連絡委員会」の連絡委員を,8月15日付けで第6部会員の三橋 淳氏から「植物防疫研究連絡委員会」の連絡委員の推薦依頼があり,前者に倉橋 弘氏,後者に北野日出男氏をそれぞれ推薦し,承認された.
    4. 7月26日付けで昆虫学会福岡大会の講演者で年会費未納者14名と非会員11名に会費納入と入会を督促し,その後全員の会費納入と入会手続きがあった.
    5. 7月28日付けで会費4年間滞納者の会員へ督促状を送付した.
  2. 会計:
    1997年度中間報告がなされ,予算の48%が執行されていること,平成9年度科学研究費補助金「研究成果公開促進費」の交付内定の通知があり,交付予定額が1,720千円となり,前年度(2,090千円)より減額されたことの報告があった.また,1990年以降の決算を分析して,収入が支出を上回り,繰越金が黒字で推移していること,1996年からは会誌直接費(印刷費)の節約が計られてきた結果,会の財政が回復して繰越金の増加に大きく寄与している現状が説明された.
  3. 渉外:
  4. 学術会議第4部動物研連関係の報告.第16期最後の動物科学研連会議(加納六郎委員)が7月17日に開催され,会長報告、各委員報告のあとガイアリスト2000プロジェクトとサイエンスミュージアム構想などについて17期への申し送り事項が協議された.第16期最後のシンポジウムが日本動物学会関東支部との共催で7月12日に早稲田大学で開催され,公開シンポジウム,”生き物はどのように世界を見ているか-さまざまな視覚とそのメカニズム”蟻川謙太郎氏他5名の講演があった.
  5. 第16期第4部付置小委員会のサイエンスミュージアム推進小委員会は第17期に引き継がれる予定であり、動物科学研連でもこの件について、スミソニアンや大英博物館のような自然史博物館の設置を目指し討議を継続するよう申し送りされた.
  6. 第17期学術会議委員会には5月15日に推薦人会議で日本動物学会から推薦された東京工業大学 星元紀教授が任命された.
  7. 自然史学会連合関係第3回自然史学会連合のシンポジウム”動物たちの過去、現在、未来 -絶滅の動物学-”が10月25日に国立科学博物館分館で開催予定.演題は以下のとおりである.
    • 「中生代の環境変動と恐竜などの大量絶滅」平野弘道(早稲田大学教育学部);
    • 「ズーストック計画-動物園における種保存計画から」中川志郎(東京動物園協会);
    • 「アホウドリはよみがえるか」長谷川博(東邦大学理学部);
    • 「地球規模で広がる海洋汚染」宮崎信之(東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター);
    • 「人類の起源と将来」馬場悠男(国立科学博物館人類研究部).
    なお,学術会議第6部の活動報告については,すでに三橋会員より本誌65(3):672-674に詳しく報告されている.
  8. 図書:
    1. フランクフルト・ブックフェア '97(1997年10月15日~20日)に " Jpn. J. Ent. " の出品を依頼した.
    2. 「昆虫」のバック・ナンバーの廉売には,合わせて30件余の注文があり,9月上旬に発送を終えた.総額609,600円(1,892部)の売り上げがあった.まだ在庫が多いので,福岡大会後に短期間の追加受注をしたあと,国内の主要公共機関や海外交換先への無料配布を実施する予定である.
    3. 国立科学博物館に寄贈した本会の交換雑誌に関する書誌情報は,学術雑誌総合目録の次期改訂版(1999年出版予定)に科博の所蔵図書として収録される予定である.また,国立科学博物館のホームページ (http:// www.kahaku.go.jp)の中でも検索できる.
  9. 各種委員会報告:

    編集委員会,自然保護委員会,日本の昆虫編集委員会および将来問題検討委員会の報告は別記の通り.

II.議事

  1. 1996年度決算と会計監査:

    別表<リンク切れ>のとおり承認された.

  2. 1998年度予算:

    別表<リンク切れ>のとおり承認された.

  3. 1998年度大会は近畿支部で引き受けることを日高敏隆代表評議員が表明され,また,1999年度大会を四国支部で引き受けることを野里和雄代表評議員が表明され,いずれも承認された.
  4. 次期編集委員会:

    次期編集委員会は事務局を九州大学比較社会文化研究科地球自然環境講座内におき,編集委員長に嶌 洪氏,編集幹事に高木正見,矢田 脩の両氏が承認された.なお,あと1名の編集幹事と編集委員若干名は次期編集委員長の推薦により後日の通信評議員会で決定されることが承認された.

  5. 次期日本の昆虫編集委員会:

    編集委員長に森本 桂氏の再任,編集委員に紙谷聡志,倉橋 弘,宮武頼夫,野村周平,山根正気の各氏の再任と,新たに大和田 守氏の就任が承認された.

  6. 会の将来問題について:

    将来問題検討委員会の報告に基づいて審議した結果,緊急の課題として次の2点を評議員会の提案として総会に附託することが承認された.

    1. 学会誌の改革:
      • 現在の学会誌「昆蟲(Japanese Journal of Entomology)」を,英文誌と和文誌に分割する.
      • 英文誌の誌名,両会誌のスタイル,編集に係わる方針,その他の詳細は将来問題検討委員会の下にワーキンググループを設けて,ここで早急に結論を出し,評議員会(書面)の承認を受ける.ただし,和文誌は現在の誌名「昆蟲(Japanese Journal of Entomology)」とその巻号を継承する.
      • 会誌名の変更は本会会則の変更を必要とする.会則変更は第3条第2項について,会誌名"「昆蟲(Japanese Journal of Entomology)」"の前に,上記の評議員会で承認される英文誌名を「 」でくくって挿入することである.これについて総会で承認を受け,会則の改正とする.
      • 会誌の発行回数は英文誌は年4回,和文誌は最低年2回とする.
      • 和文誌の内容は従来の和文論文,会記,大会案内などに加えて,英文誌掲載論文の和文抄録,総説,及びニュースレター的内容などを含めるものとする.
      • 会誌の二分割に伴う編集出版に関わる費用が,来年について予算を超過した場合は,予備費及び,それ以上の超過については学会基金から補填する.
      • これらの事項の実施時期は,次年度からとし,当面編集事務は2誌ともに次年度の編集委員会が担当する.
    2. 学会賞について:

      学会賞については,将来問題検討委員会の報告を了承し,当該委員会の下にワーキンググループを設けて,早急に結論を出し,次年度大会にその結果を報告し,必要に応じて承認を得る.

  7. 自然保護委員会の出版計画:

    「昆虫類の多様性保護のための重要地域第1集」が明年夏を目標に,会員内外からの注文によって出版する計画が承認された.なお,巣瀬委員長から多数の会員諸氏のご協力をお願いしたいとの要請があった.

  8. 会員名簿作成の計画:

    1993年の名簿の刊行以降,名簿の発行がなされていないので,執行部では来年3月末日発行を目標に会員名簿の改訂出版を行うことを評議員会に提案し,承認された. 承認された計画の内容は,名簿に電子メールアドレスを加え,また新郵便番号制度に対応して新しい郵便番号を採用すること, 会員名簿調査カードの送付,注文,印刷,発送の全てを学会独自に行い,将来的に別の用途にも利用しうる文書情報としてファイル化して保存,管理すること, 価格は前回と同額の1部1,000円(送料別)に設定すること等である.

    なお,名簿作成に際しては完成までの期間において会員名簿刊行会を設立し,以下の各氏が委員に就任し,作成に係わる全ての事項について協議し, 適切な計画によって名簿を発行することが承認された.

    会員名簿刊行会委員:(委員長)三枝豊平,(委員)湯川淳一,嶌 洪,緒方一夫,上宮健吉(作成責任者).

    なお,会員名簿は販売見積もり部数が650部に達しない場合には赤字が見込まれるため,万一の場合には学会予備費から赤字分を補填することや, 余剰金は当該年度の会計に組み入れること,注文部数が少ない場合には名簿に広告を掲載すること,関連学会会員にも同価格で販売することなどの案が承認された. なお,完成した名簿情報のファイル管理と維持について次のことが承認された.

    • 名簿のファイル情報の管理は庶務幹事が行い,次期の庶務幹事に継承する.以後の注文も庶務幹事が処理する.
    • 名簿のファイル情報は学会に帰属するものとし,保存ファイルの貸与やコピーの供与は評議員会の承認を得るものとする.
    • 各支部から要請があれば支部単位の名簿をフロッピーとして実費で提供する.
    • 会員の名簿上の記述に変更(会員異動情報)があった場合,庶務幹事は内容を加筆修正することができる.ただし,これは以後の庶務幹事の責務とはしない.
    • 名簿は昆虫学会と無関係の名簿業者には販売しない.
  9. 学会のホームページ開設の計画:

    最近の諸学会ではホームページを開いて会員間のコミュニケーションを機能的に行い,広範な会員を対象とした通信や社会的な対応などを行っているが,本会でもホームページを開く方向で以下の執行部提案が承認された.

    • ホームページ作成委員会を設立し,具体的な計画を立案し,明年度1年間を目標に委員の時間の許せる範囲で開設を進めること.
    • サーバサイトは学術情報センターにあるAcademic Society Home Villageを予定している.
    • ホームページ作成委員会の構成として,(委員長):三枝豊平(学会長),(委員):秋元信一,緒方一夫,粕谷英一 ,上宮健吉,三中信宏,野村周平,沢田佳久,吉澤和徳の各氏が承認された.なお,ホームページの開設は明年(1998年)1月1日を目標としており,
      インターネット http:// wwwsoc.nacsis.ac.jp/entsocj/ のURLアドレスにて参照できる見込みである.

福岡大会総会の報告(一部)

協議事項: 4)「学会の将来問題」について,総会での質疑応答を録音テープから起こしたものを紹介します.これは協議事項 4)の I.「学会誌の改革について」は,会則の変更を伴う内容を含んでいるために,会員に総会の経過を周知して頂くためです.会則等の変更は「評議員会の審議を経て総会に諮り,総会出席者の過半数の同意によって成立する」となっています.10月2日の評議員会は会則第22条により成立しました.同評議員会に「学会誌の改革」の議案が執行部から提出され,長時間の審議を経たのち採決にはいり,全委員の承認が得られました.そして,10月4日の総会において,三枝会長が議案の提案理由を説明し,総会出席者の圧倒的多数の同意によって議決されました.以下は学会誌改革を含む「学会の将来問題について」の質疑応答の要約です.

(庶務幹事,上宮健吉)

協議事項4)学会の将来問題について

I.学会誌の改革について

[議案の提案内容]

  1. 現在の学会誌「昆蟲 (Japanese Journal of Entomology)」を,英文誌と和文誌に分割する.
  2. 両会誌のスタイル,編集,その他に関わる詳細は,将来問題検討委員会や評議員会で結論を出さなかった.両誌の具体的な内容はさらに検討する必要のあることから,学会誌に関する全ての問題は,将来問題検討委員会の下にワーキング・グループを設けて,ここで詳しく検討し,編集の実務,投稿規定などの詳細も含めて同上の討議を経て早急に結論を得て,評議員会(書面)での承認を受けたい.
  3. 学会誌の名称変更は会則(第3条第2項)の変更を必要とするので,「昆虫」"Japanese Journal of Entomology"の前の部分に,今後開かれるワーキング・グループが答申し,評議員会で承認された場合にはその英文誌の誌名を挿入することを承認して頂きたい.
  4. 今後発行される和文誌は,現在の「昆蟲」: Japanese Journal of Entomology の誌名をそのまま継承し,巻も号も引き続いて継続することにしたい」.4)会誌の発行回数は,英文誌は年に4回発行し,また和文誌は少なくとも年に2回は発行する.大会案内,会記等には最低年2回の発行が必要であるからである.今後恐らくもっと回数は多くなるであろうと考えられる.
  5. 和文誌の内容は,従来の "Japanese Jouranl of Entomology" に搭載されてきた和文論文,会記,大会案内に加えて,英文誌に掲載される論文の和文抄録,総説等,ニュースレター的な内容も含める.
  6. 出版費用は英文誌についてはこれまでの Jpn. J. Entomol.の出版費用でほぼまかなえる可能性がある.レフェリー制度の充実などで変更になるかも知れない. しかし,和文誌の出版は新たな費用が必要になることが確実視される.これは将来的には会費の値上げの可能性があるが,値上げは会誌の質が向上し,会員が値上げを納得するようになった段階で考えたい.来年については予算を超過した場合には予備費(予算70万円ほど)を充て,これを超える場合には学会基金を流用する.これは会則により,評議員会の承認が得られれば運用することができるものである.
  7. この実施時期は次年度に行う.当面,和文誌,英文誌の両誌ともに,次年度の編集委員会が担当する.

II.学会賞について

[議案の提案内容]

これは将来問題検討委員会の結論を評議員会で了承したものである.具体的には,将来問題検討委員会のもとに学会賞についてのワーキング・グループを設置し,次年度の大会にその結果を報告し,総会で承認を受けるものである.評議員会では,学会賞は「論文賞」に限定すべきであるという意見が多くを占めた.それ以外の賞にすると複雑な問題がからんできて,実現が危ぶまれることが予測されるからである.若い会員が他の分野の若い者と就職選考評価において不利にならないようにすることが必要であると認識している.以上のことを具体的な提案としてご審議をお願いしたい.

総会質疑内容

質1)和文誌の機能について,また英文誌,和文誌の発行回数はどうなるか?
会長)各号に和文論文が必ず出るというわけではない.和文誌の発行回数はワーキング・グループで検討したいが,極力年4回出すことが将来的には理想である.現状では予算のこともあるので,最低年2回を考える.編集体制のこと,さしせまったこともあり,確実な立案は今はできない.
質2)将来問題検討委員会のワーキング・グループの体制はどんなものか?
山根)今の委員に他のメンバーを加えて作りたい.ある地域の範囲のメンバー,委員長,会長のところに来やすい方とか.旅費を支給して,早急に問題を解決したい.一刻も早く結論を出したい.また,学会賞は学会誌に掲載されたものが対象になるから,会員には次号から論文が選考の対象になるということであるから,若い会員には魅力的な論文の投稿を期待したい.
日高)三枝会長が「一刻もはやく改革を実施したい」との強い表明について,補足説明したい.その背景には,応動昆の合併前から学会の改革に昆虫学会は取り組んできた経緯があったこと,しかし進展はなかったし,いっそ応動昆と合併することで改革ができるだろうと判断して,合併について昆虫学会は賛成が2/3を超えたものと思われる.しかし,合併が実現しなかった今,この長期にわたる合併問題の討議で得られた結論を一刻も早く実現したいという意味であると考えたい.
質3)昆虫学会の役割分担について何ら方向性を示さないままに,単によい論文を出すということで良いだろうか?
会長)これについて,昆虫学会の在り方を延々と討議していたら,多くの大切なものを失うであろう.学会に失望して退会する会員が出てくるだろう.協力を惜しまなかった古くから改革に熱意をもっていた会員はもはや退会するであろう.
中筋)学会がなにを目指すのかは,将来問題検討委員会でも話し合ったことである.しかし,昆虫学会の在り方について合意を得ながら進めるのは観念的なことを話しあうということになる.差し迫ったことをまず考えるべきである.
正木)学会が何を目指すかの枠をはめるのには反対である.昆虫学の色々な分野を包括した形で昆虫学会は存在するであろう.
会長)昆虫学の進歩を計る,目的は会則の第2条のこれに尽きるだろう.この会則を変えるなら,総会で会則を変更することになる.
質4)本当に改革を急ぐ危機的な状況にあるのか.十分にこの問題は討議して進めるべきではないか? 学生の就職に有利というならば,教員の任期制の問題で,我々職を持つ者にもこれは関係がある.
会長)今のこの現状を危機と言わずに何を危機というのか.学生と職員は別である.話しの混同だ.
阿江)会誌の改革,特に英文誌をしっかりしたものにして,英文論文を発表することは研究者にとって極めて重要なことである.編集作業も大変であるが,編集委員も意欲を持っているので,頑張ってほしい.
林)上の阿江氏と同意見.頑張るというのだから,よろしくお願いしたい.
議長)では,時間もありませんから,「学会誌の改革,学会賞の設立についてワーキング・グループの討議に付して評議員会の承認を経て結論を出す」ということについてご承認をお願いいたします.
 

(大多数の拍手によって承認された)